デリケートなサンゴを見て思うこと

 3年ほど前から、自宅に海水槽を置いている。 
あのディズニー映画の中では心優しかったカクレクマノミが意外に気性が荒く、ほかの魚をつついて大けがをさせた。小指ほどの大きさもないテッポウエビが夜中にハサミを「パッチン!」と鳴らす音が部屋中に響き(本当に驚くほど大きな音がするのだ)、目を覚ましたこともあった。日々新しい発見がある。 

 中でももっとも驚いたのは、サンゴのデリケートさだ。 
夏場、ほんの少しでも水温が上がるととたんに調子を崩す。魚のえさの食べ残しが少しでもたまると海水の中の栄養分が増えてしまい、いつもはフサフサしているポリプが開いてくれなくなる。「ごめんね」と声をかけて、水槽の掃除をする。 

 「地球温暖化でサンゴがピンチ」といった記事をこれまで何度も眼にしてきた。海外で海に潜り、白化しかけたサンゴを実際に見たこともある。それでも、ほんのわずかの環境変化が生態系に致命的な影響を及ぼすことを肌身で知ったのは、家にサンゴが来てからだ。 
地球規模の課題が、我が家のたった45センチの水槽の中で再現されている(いや、再現させないように日々苦労している)。SDGsだ、気候変動だと大きなワードを振りかざさずとも、何が問題なのかが小学生の娘にも一目瞭然だ。おお、これは「我が家のSDGsショーケース」ではないか、と一人悦に入りながら、考えたことがある。  

 朝日新聞社に入社したのは四半世紀前、以来ずっと新聞記者として世の中のことを書き続けてきた。エルサレムではパレスチナ問題を追い、ロサンゼルスでは移民の暮らしをよく取材した。それぞれ充実した日々だったけれど、自分が伝えたいと思っていたこと、その土地のにおいが日本の読者にどれだけ伝えられたかというと、正直あまり自信がない。

 そういう個人的な反省の思いもあって、いま編集長を務めている「GLOBE+」では、世界で起きた出来事について「これって大事な話なの? どういう意味があるの? 日本に暮らす私たちにどう関係するの?」をどう見せるか、を日々考えている。初対面の人には説明を手短にするために「国際ニュースサイトです」と言うことが多いけれど、本当はちょっと違う。日々起きるニュースそのものよりも、そのニュースの文脈や背景、私たちの暮らしとのつながりを見せるメディア、というイメージだ。

 このサイトを見に来れば「世界のいま」が知識としてでなく肌感覚として分かる、我が家の水槽のような存在のメディアにGLOBE+を育てていきたいと思っている。 

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